中学2年の夏、エロから始まるWindows95
忘れもしない西暦1999年7の月。
世間がノストラダムスの大予言で騒いでいる頃、僕は友達の家にあるWindows95でエロ画像を見ようと必死だった。
当時は中学2年生、性の発展途上国まっしぐらの僕はとにかくエロに飢えていた。スマホなんて無い、というか携帯電話も持ってない。持っててもネットなんてできない。あの頃僕はどこにもつながっていなかった。しかし、今よりも確実にエロに飢えていた。とにかく、とにかく女の裸が見たかったんだ。
そんなとき知ったのがインターネットだ。友達の家にはパソコンというものがあり、それでインターネットができるらしい。インターネットがなんなのかさっぱりわからなかったが、とにかくインターネットさえあればエロ画像が見れるらしいということだけはしっかりと理解した。すごいぞインターネット。
「なんでそんな重要なことを早く言わねーんだ!」と言いたくなったが、エロ画像が見れるならとぐっとこらえたのを覚えている。
さっそく友達の家に行ってインターネットを始めた。
友達に家にあったパソコンはブラウン管テレビを一回り小さくした感じのものだった。中にはWindows95が入っているらしい。やはり何を言っているのかさっぱり理解できなかったが、これでエロ画像が見れるならそんなことどうでもよかった。
「ピポパポピ、ピーヒョロロロロロー」みたいな音がしてしばらくするとインターネットにつながったらしい。そもそもインターネットでどこにあるの? 東京のあたりかな? と思ったりもしたが、早くエロ画像が見たくて考えるのを止めた。
さっそくエロ画像を見るために、Yahooというページで検索だ。キーボードを見ながら人差し指を使って「おっぱい」と打った。僕は学校じゃ絶対に見せれないようなニヤケ面だっただろう。友達も気持ち悪いくらいニヤニヤしてて「こいつ気持ち悪いな」と思った。でも無料でエロ画像を見せてくれるから許した。
おっぱいを検索したが、おっぱいが全然出てこない。画面には文字ばかりが並んでいる。騙された! と思ったが、ここからサイトというページに行き、そこにエロ画像が用意されているらしい。期待させるじゃないかインターネットめ。
ひとつのサイトをクリックして覗いてみた、やはり文字ばかりだ。今思えば2ちゃんねるだっと思う。しばらく色々見ていると「めっちゃエロいおっぱい画像はここ!」みたいなリンクが貼ってあり、僕たちは何も疑うことなくそれをクリックした。ふたりとも最高に気持ち悪い顔をしていたと思う。
どうやらダウンロードリンクだったらしく、画像のダウンロードが始まった。
いよいよおっぱいが見れる! これはただのおっぱいじゃない、初めてインターネットを使って見るおっぱいなんだ! 僕のインターネット革命の始まりじゃい!!
みたいな感じで興奮していたと思う。
しかし、待てど暮らせど何も映らない。パソコンから永遠にカリカリカリカリ音がするだけだ。どうなってるインターネット。何度かパソコンのモニターをパンチしたり、あからさまにでかいため息をついたりした。昔のパソコンのモニターはガラスなのでめちゃくちゃ痛かったからムカついた。
友達のことを「こいつやっぱり嘘つき野郎だわ、もう絶対無視しよう」と思い始めた頃、友達が口を開いた。曰くエロ画像を見るに根気がいるらしい。当時のネット回線では今みたいにすぐに画像が表示されることはなく、ちょっとずつちょっとずつ見れるようになる焦らしのインターネットだった。
最初は心と下半身をワクワクしてパソコンの前で待っていたが、あっという間に飽きてバガボンドを読み始めた。
なるほど、宮本武蔵は昔は新免武蔵という名前だったのか。うーんバガボンドは面白いだけじゃなく勉強になるなあ。とか思っていると、ダウンロードが終わったっぽい。
約3時間、この瞬間のためにひたすら待ってたぜ!(バガボンド読みながら)さあこの俺を最高に興奮させてくれ!
・・・・・
僕が初めてのインターネットで見たエロ画像は、50歳くらいの外人のおばさんが全裸で立っているものだった。
ドチクショウ! インターネットめ!! 一筋縄じゃいかないぜ!!
僕はそんなことを夕日に向かって叫んでいるよう気持ちで帰宅した。
こうして初めてのインターネットは幕を閉じた。
それから友達の家にいくたびにエロ画像チャレンジするのだが、
・おばさんの全裸
・動物の全裸
・太ったおじさんの全裸
などなど、目的のエロ画像はなかなか見れずじまい。今思えば当時のインターネットはエロに関してはそれなりの知識があり、様々な洗礼を受けたものだけが見れる初心者お断りのような雰囲気があった。
結局まともなエロ画像は拝むことができず、友達の家にあったWindows95は僕が高校生になるころに動かなくなった。
劇終